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help リーダーに追加 RSS 「あたしはそのへんの無知な小鳥じゃないんだから」

<<   作成日時 : 2006/06/30 15:33   >>

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「まだ七時よ」
 彼女は朝はやい街が好きなのだ。朝はやい街をぬけ、白い息をはずませてここにやってくるのが。
「それに」
 鏡ごしにぼくをにらんで、小鳥ちゃんはさらに言った。
「あなたたち、なにかというとキスばかりしてるのね」
 おこるというより不満な口調だ。
「あたしの口がくちばしだとおもって」
 ぼくはおどろいて、それからおかしくなって笑ってしまう。
「きみのくちばしはとてもきれいだよ。ほんとうにきれいなすきとおった赤で」
 小鳥ちゃんはふくれているが、ぼくとおなじくらい、ぼくのいつもどおりをたのしんでいる。台所から、彼女のいれるコーヒーの匂いがただよってくる。
 その日は、しかし結局どこへもでかけなかった。大掃除をする、と、彼女が宣言したのだ。
「もうじき春だもの」
 まだ寒いけれど、その寒い空気の粒の一つ一つに、たしかに春が含まれている、と彼女は言う。
 ぼくは洗濯を担当した。カーテンもシーツも枕カバーも、布という布は手あたりしだい洗う。
「すてき。嵐みたいね」
 ぼくの肩にとまって洗濯機をみおろしながら、小鳥ちゃんはうっとりと言う。
「あたし、この音も好き」 
 ぼくの小鳥ちゃんはすこしかわっている。
「一度あのなかに入ってみたいわ」
 物騒なことを言うのでぼくはぎょっとした。
「だめだよ。あぶないんだから」
 小鳥ちゃんは、さもわかってないなというように、
「知ってるわ」
 と言う。
「あたしはそのへんの無知な小鳥じゃないんだから」
 洗濯機は、大きな布をつめこまれて普段以上に大きな音をたてている。洗濯の匂いとうずまくしゃぼん水。
「それは失礼」
 ぼくは言った。写真立てをたおしたあとで、いつも小鳥ちゃんが言うように。

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居酒屋店長
2006/06/30 16:02
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2007/09/27 09:52

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
ご返事遅れてごめんなさい(^^;。これで完結です(^^)。長いことご拝聴いただき有難うございました。
江國香織お好きになられましたか?
magnoria
2006/07/01 12:19

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