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help リーダーに追加 RSS 霊感的女性ボナ・マンディアルグ

<<   作成日時 : 2006/06/22 22:50   >>

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「私の 唯一にして 最大の幸運は ごく若い中に 私の姿をはっきりと映してくれる鏡、 私の分身である女性 ボナに出会えたことである」

 これは、マンディアルグの有名な言葉である。
 実際詩人にとって、霊感的女性ほど重要なものはない。だが、マンディアルグのように、完全に自分を映してくれる分身に出会い、錬金術的結婚がなりたつ場合は、ごくまれなことなのだ。彼は74歳をすぎたいまもなお、創造の泉が枯れない。

 この、マンディアルグ文学を、完成へと導いた女性、彼の唯一人の、パーフェクトな霊感女性であるボナとは、どんな女性なのだろう。
 彼女は画家なのだ。私は、彼女を一目見たとき、女性の顔では、はじめて、肖像画を描きたい欲望にかられた。同時に、彼女の妹でもあるような感覚をもった。それは、彼女が画家であるからだったのだろうか。
 美しい人だ。秀でた額、大きな感受性の強そうな瞳、若いときは、ヨーロッパで五本の指に入る美人といわれていたそうである。
 マンディアルグは、若い頃、レオノール・フィ二とボナと三人で住んでいた。といっても個人所有のホテル形式の大きな家の一階、二階、三階と別れて住んでいたのだった。
 レオノール・フィ二もあの才能である。詩人マンディアルグとの錬金術的関係が必要だったのだろう。彼女は、マンディアルグによって、自分の芸術を肥やしていく、これに対して、ボナは、与えてしまうのだ。マンディアルグは、こんなボナを愛した。
そして、詩人と画家の錬金術結婚と、現実の恋愛結婚と二つの結合のなされる「完璧な結婚」をした。
 だがこの結婚は、相克の愛の葛藤の歴史であった。ボナは何よりも前に霊感女性である。絶対の自由の中に、魂は解放されている。そして、あらゆる行動が、純粋直感だ。星の緊張と緩和をそのまま身体に受ける。
 マンディアルグと結婚して数年のち、ボナは詩人オクタビオ・パスに向かってまっすぐ走った。そして、マンディアルグとは、離婚する。このときの、マンディアルグの苦しみは、どんなものであっただろう。だが、八年ののち、再び、ボナを、そばにひきよせて、再婚したのである。
 ボナの純粋直感は、詩人の才能を決して、見誤ることはない。
 1971年に、彼女はわが国の三島由紀夫に夢中になった。彼の自決以後である。
 マンディアルグは、彼女のミューズのアンテナが、激しく震動するのを、冷静に見詰めていた。そして、彼女を通して、三島由紀夫を発見することになる。
 こうして、「サド侯爵夫人」はマンディアルグの手によって、十八世紀フランスの貴族の言葉に、翻訳された。そして、三島由紀夫の真価が伝わったのだ。フランス現代文学の作家たちの中でも、十八世紀の貴族の言葉を正しく、美しく書けるのは、マンディアルグしかいないといわれている。三島由紀夫の文学は、これを契機に、この後も続々と翻訳、出版されていった。
 ボナはいま、三島由紀夫の霊界の魂と恋愛をしていて、毎夜、会話を交わしているといっている。ボナの寝室には、長さ一メートル大の、三島由紀夫のポートレートが飾ってある。こんなボナを見詰めて過ごしてきたマンディアルグの心の葛藤は、いかなるものであっただろう。彼のダンディズムは、いっさいそれを表にはみせない。
 魂が流した血は、創作の中に、結晶していく。マンディアルグは、強い芸術家である。中でももっとも強いと思えることは、確実に、自分の分身を見抜いた洞察力と、それをいかなるときも失わないようにしたことであろう。
   (「月時計のパリ」(平沢淑子 講談社 1984))

付記  この本が上梓されたのは1984年6月9日 聖ディアーヌの祭りの日でした。

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magnoria
2007/07/31 18:05

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