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help RSS 「くず人」とカエルの王様

<<   作成日時 : 2009/06/18 21:28   >>

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 先日講演を聴いた中川李枝子さんは昭和10年生まれ、私の父と同じ年のお生まれでした。戦時中の物資のない貧しい時代に育ち、本もなく、御両親に初めて買ってもらった「アンデルセン童話集」と学者だったお父様の本棚で見つけた金田鬼一訳の岩波文庫の「グリム童話集」をとても大切にしていて、カエルの王様のお話がとてもお好きだったことを話してくださいました。私の父も学者ではないですが、先生をしていたので本棚には数学や天文学や教育関係の難しい本ばかりあって、私の読めるような本はほとんどなくて、その中からイラスト集や辞典の絵のところなど子どもでも読めるところを探して読んでいたのと似ているなあと思ったのでした。
 帰宅してから「神々の赤い花」(西川照子 平凡社)を何げなく読んでいたら、次のように書いてあった。

 上代、「くず」と呼ばれた山人がいた。彼らは穴を掘って住居とし、言語を解さず、蛙を好物としていた。「くず」には国栖、・・、国巣の漢字が当てられる。

 じゃあ、カエルの王様は「くず」「山人」だったのだろうか?言語を解さずというのだから、詩人?

「くず」の最も有名なのは、大和(奈良県)吉野郡にいた者たちである。ここは現在、吉野葛の名産地である。
「くず」はおそらく古俗を護っていたため、新参の者たちの民俗を受け入れられず蛮人として山へ山へ追い立てられてゆき、卑しめられたものと思う。

 この「くず人」はまた朝廷と因縁深く、吉野に住んだ彼らは応神天皇の御代から宮中の節会に参加、貢物(魚、鳥)を献じ、国栖歌という風俗歌を笛、口鼓を使って奏したといわれる。また折口信夫によれば、国栖歌とは鎮魂の歌であるという。一体何を誰を鎮魂するのか。それは先住民の御霊であったに違いない。「くず人」に限らず山人は悲しくも征服民たちに媚び仕え、かろうじて生き延びた。しかし彼らの呪歌がなければ、応神天皇とて、やすらかに眠れる日々はないのである。ここにはある意味での和解がある。山人は一方で卑しめられながらも、一方で神としてあがめられた。「くず人」は必ず頭に葛のかずらを巻いて出仕した。他の山人も神になった扮装として蔓を頭につけたと折口は述べている。
 蔓になる植物としては葛の他に藤などマメ科のつる草類が多い。・・・。京の有名な葵祭では両かずらといって、つる草ではないが、その祭の名の通り、葵と桂が頭上を飾る。
 

ふーん、賀茂族も「くず」で、だから王女様とお近づきになって結婚できるのね?カエルの王様は山の民、古い男、詩人だったんじゃないでしょうか?これって新説?ヘンな発想?

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コメント(41件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。
やまおじさんと申します。
私のブログへのトラックバック、ありがとうございます。
西川さんのこの本を読んだことがなかったのですが、記事を拝読して興味を持ちました。
図書館にもあったのですが、ネット販売で中古本を注文してしまいました。
なかなか興味ぶかい本ですね。
やまおじさん
2009/06/21 14:37

‖序幕‖

或る遺跡発掘現場にて。

重責を肝に銘じる一刻。鬼の形相で仁王立ちする現場の指揮官=調査団団長。

幾何学立体図形の組み合わせのような土の広がり。
さまざまに掘り進められ露出した土塊の形作る凹凸(おうとつ)が、流れる雲のまにまに拡散し降り注がれる光跡と陰影とによって変幻、…一面では昼下がりだというのに夜露を帯びて濡れたようにしっとりと、また翡翠色の翳りに縁取られたある一面では期待するように上気しほんのり紅を差しており、さらにまたある一面では恋の旋律を奏でる楽器にさも似て互(かたみ)に響き漣(さざなみ)立って震えており…、どれもが同じ性質をもった塊とはまるで思えない量感を、無限の水玉のように投影されている、その人工物とも天然物ともつかない多面体に潜む果てしなく永い年月に渡る化学反応と堆積を、そして幼な児の微笑みを彷彿させる玄妙な綾(あや)を、愛おしげに見晴らしながら、寸暇、心行くまで愉しんでいる。



このどこかに必ずや、退屈なパラダイムを覆す、世紀の発見が秘められているに違いあるまい。



|暗転|

s.k
2009/06/29 18:38
やまおじさん、初めまして。御返事が遅くなって申し訳ありません。この本に教えられたことたくさんありますよ(^^)。私はなぜか山好きな方と御縁があるようなのです。不思議です。またよろしかったらコメントくださいね(^^)。
magnoria
2009/06/29 18:53
s.kさん、微妙な婉曲な詩的な表現ですね(^^)。おっしゃりたいことがわかるような。でも、暗転なんですか?
magnoria
2009/06/29 18:58
幼少より天然パーマで天然な私はエレキテルな毎日。よく蛙の表と裏をひっくりかえして遊んでいました。
先日天に召されたMichaelはミカエルになったのでしょうか?
天然人
2009/06/30 15:59
下駄を放って天気を占うのは、ありますが。

カエルが鳴くと雨が近い、と言われますね。

好奇心旺盛なクリクリ頭の天然児ちゃんから、下駄替わりにひっくり返された蛙チャンの子孫たちは、今頃どこで、どんな唄を歌ってるんでしょう(笑)

ねぇ、magnoriaさん?



…s.kも、歌ってみましょうか…。
s.k
2009/06/30 20:35

‖第1幕‖

遺跡発掘調査団、仮設テント内。

4名の作業員を前にして講釈を垂れる団長の、張りのある嗄れ(しわがれ=しゃがれ)声が響く。

団長「...え〜、であるからしてェ…」
ホワイトボードにマジックで勢いよく、なにやら書きだす。


……
定住農耕社会の枠組みから被る、賤民・不具の差別と排除.野山を渡り歩く流浪・放浪者(さすらいの民).落ちこぼれ.
自然災害の予兆を一番最初に知る者.“超能力者”.
パニック発作.“神のお告げ”.預言者.
自然への脅威=畏怖=感謝.
イケニエ(人身御供).占い.呪(まじな)い.

備考:てるてる坊主=日和(ひより)坊主.人形(ひとがた).形代(かたしろ).“日和申し”という晴天を祈る儀式=祭り.

アニミズム.多神教.汎神論.
シャーマン=神子(みこ).
売春業.
天皇制.祭祀と供儀.
神社の起源.
集落共同体における、有史の遥か以前から続いてきたハンディキャップ者の役割.
芸能.神楽.祭礼.
古来、詩人とは、道化でもあり.はたまた天使(神の使い)でもあった.
……

s.k
2009/06/30 20:38

団長「{イカリ肩が振り向いて}思いついた順にざっと列挙してみたがァ…これら表象はみなァ共通点…ある原理がァ通底しておりィ…これに即して敷衍することでェ…」

作業員A「{‘工事中’の看板を首にぶら下げている}ゲロゲロ…団長サン、ソンナ小ムズカシイ話ナンカ、オレ達ニャまーぼーどーふデサァ…トットト掘ックリ返シ始メマショウヤ!」

団長「ばかッ!それを言うなら馬耳東風だろがッ!…今大事なところなんだから黙って聞けッ!…でェ…なんだァ...」

作業員C「{ぶつくさヒャクマンダラの小言。苦虫を噛み潰したように}...茶んChaらおかしいぜぃ…ったく何様のつもりだぁ?あのオッサンはよぉ…ここをどこだと思ってやがるんでぃ…オマケに甘ちゃんのアマチュアのクセしやあがって、いっぱしブツから、こちとらたまったもんじゃねぇよっ...」

作業員D「{上の空。アタマから吹き出し。鄙びた温泉の、煙(けぶ)る湯船で両手に美女}」

s.k
2009/06/30 20:42

団長「...え〜、であるからしてェ、カエルの王様がァ、詩人だとしてもォ、なんらァ奇妙キテレツな発想とは断じきれないのであるゥ...学術研究というものはァ、もとよりィ、緻密な踏査に基づいた事実やァ他の専門家による調査報告を積み上げェ、史実として実証するゥ...」

作業員C「{鼻の穴をほじくりつつ}...ゴリラの顔して、話が長ぇんだよなぁ…下唇も飛び出して長ぇけどな、プッ...」

作業員D「{上の空。鼻の下がでれ〜っ。アタマから吹き出し。キングサイズベッドのヘッドボードにもたれ、やっぱり両手に美女}」

団長「...いわゆる“マレビト”はァ...また“ヨリシロ”というゥ...ともすればァ、人文学的一般教養に陥りがちなペンをォ...抑えきれない詩的霊感がァ...もうひとつの顔ォ、釈迢空(しゃく ちょうくう)としての歌人であるゥ...先生はァ、聖 泉鏡花にも深い関心を寄せていらっしゃったァ...それはァ、知る人ぞ知るゥ、もうひとつの顔ォ、マイノリティとしてのォ...」

s.k
2009/06/30 20:49

作業員C「{泣きべそをかく。猿の尻のように顔面真っ赤。アタマからは湯気が立っている}いい気ンなって、調子ブッこいてんじゃねぇぞ、どっかの劇作家みたいな、この遅筆里予良…」

作業員D「{作業員Cの台詞のおしりのほうでかぶさるように。大きく伸びをしながら}ふぁあ〜〜〜ふぁふぁふぁふぁ?…ブッ!」

作業員ABC「{めいめいかなりのオーバーリアクションでひっくり返る}うわっ!クッサーっ!」

白板に、またなにやら書き出しながら、そのまま振り向かずに。

団長「コラコラコラっ!騒がしいぞッ!」

s.k
2009/06/30 20:52

……
キリストの十字架磔(はりつけ).
中世における魔女狩り.現代の、過熱するスキャンダル報道など.に見受けられる社会的リンチ=暴力による、ストレス解消と社会秩序の安定=世論の集団的恒常性.

備考:mass communication.情報を牛耳る・操る立場=勝者=“神の手”

市場経済=定期的に発生する恐慌と国家破産.
内戦や民族紛争.テロ.世界大戦.

死と再生.犠牲と復活.
社会全体のコミュニケーション過程を円滑にするための(作為的、あるいは無作為的)装置.
……


振り向きざま、一同の注意が集中するのを睥睨(へいげい)しながら、閻魔大王のように、怒り肩をさらに怒らせて。

団長「…こういったァ、牽引傍証を精査しィ、民族学のみならずゥ、歴史学・社会学・哲学・心理学・宗教学・文化人類学・美術史学などォ、諸々のフィールドからもォ多角的に光を当てアプローチすることでェ、人類史の表舞台には決して現れることのないィ、闇に蠢くタブーの領域をォ、白日の元に晒して解明することがァ...」

s.k
2009/06/30 20:53

作業員B「ブーブー!フーフー!団長!…それと、土を掘っくり返すことと、どんな関係があるンすかねえ。おら早く土っくれに鼻を突っ込みたいンすよねえ。ビビデバビデブー!」

作業員全員「{足を踏み鳴らし、デスクを叩いて大合唱}ソーダ!そぉだっ!そんなの関係ねぇっ!そんなの関係ねぇっっ!!」

団長「あ"〜まったく!こいつらときたら、ダメだコリャ!…講義はこれにて終了ッ!よしッ!各自準備して持ち場にィ…全員散れえッ!!」



|明転|

s.k
2009/06/30 20:55
おはようございます。天然人カティンカです。先生「准遅筆堂」(失礼)とも思えぬ筆の早さですね。この作品は全幕上演すると何時間かかりますか?今、板にモスクの絵を描いていますが屋根はブルーで決まりですか?それを考えていて私も今日6時間しか眠れなかったです(いつもは8時間寝てる天然人)海を泳ぐ象を海底から見上げている夢をみました。ではmagnoriaさん、みなさま今日一日いい日でありますように!
天然人
2009/07/01 08:33
天然人さん、私、天パーの方となぜか御縁があるのですよ(^^)。髪の毛サラサラの人って、どうも悩みなさそうな感じがして違和感が・・・。マイケルはお星様になったのだと思います。全力で生きて燃え尽きたという感じがします。ある意味で時代の犠牲者であると思いますし、痛ましさを感じます。
magnoria
2009/07/01 17:43
s.kさん、それがs.kさんの日常なんですか?なかなか大変ですね(苦笑)。分かってもらえないってつらいことですものね。それでも続けられている忍耐に敬服いたします。
magnoria
2009/07/01 17:50

〜〜〜象〜〜〜
      °
     。 
      。
 ю   。 
ю   :  
___天___

s.k
2009/07/02 01:18
色んな色が色々あって、迷いますね。

悩ましいながらも、そのひとときは、ワクワクするものです。

造化(象毛ではありませんよ)の神秘には到底かないっこないのですから、開き直って、ひたすら心の指針の命ずるがまま「他人ときちんと向き合えない人は、自分と向き合うこともできない。自分ときちんと向き合えない人は、他人と向き合うこともできない(magnoriaさんの御言葉)」。

その御言葉を信じて、背中を押され、“今”を彩る色使いに向かい合うことができるのです。


magnoriaさん、と謂う
一本の樹木の花盛りを通して見た
空の青



団長を演じる俳優「{観客席に向かって、力強く指を差し、天まで谺(こだま)するような勇ましい声色で}次ィ!行ってみよぉ〜ッ!!」

TO BE continued…

s.k
2009/07/02 01:26
〜〜〜象〜〜〜
      °
     。 
      。
 ю   。 
ю   :  
___天___

これ可愛い。

今日も一日おだやかな日でありますように。
天然人
2009/07/02 09:14

‖インテルメッツオ(幕間の余興)‖


Thunder and Lightning(稲妻と雷鳴).
Enter three 幸幸幸

1幸. When shall we meet again? In thunder, lightning, or in rain?

2幸. When the hurly-burly's done(どさくさ騒ぎがおさまって), When the battle's lost and won(戦が勝って負けた時).

3幸. That will be ere the set of sun.

1幸. Where the place?

2幸. Upon the Utopia(あの桃源郷).

3幸. There to meet(今すぐ逢うのさ) with Magnoria.

1幸. I come, 八我(いますぐ行くよ、パンダ猫).

{2幸.} PORSCHE 911 type 930 calls(カエル顔かい).

{3幸.} Anon(今いくよ).



|暗転|

s.k
2009/07/03 13:14
s.kさん、また暗転ですの?これから続きがありますよね?私の言葉がs.kさんの前向きな気持ちに繋がっているのなら嬉しいのですが。
magnoria
2009/07/03 14:37
magnoriaさん、このお芝居はどうも蛙の被り物を頭にのっけて見るみたい。それに長くなるみたいだから寝ないように気をつけなくちゃ。ね。........Zzzzzzzz.....

天然人
2009/07/03 18:52
magnoriaさん
こんばんは

気にしない
気にしない

一休み
一休み

by 照る照る坊主(笑)



天然人さん
こんばんは

ありがとうございます。
これからも、よろしくお願いいたします。
s.k
2009/07/03 19:11
何か.....magnoriaさんとs.kさんと天然人が同時にPCに向かってる。すごいすごい!!チャット状態。でも私今からお肉を焼いて夕飯にしますので「いち、抜けます」。

s.kさん、こちらこそよろしくお願いいたします。
天然人
2009/07/03 19:19

‖続 インテルメッツオ(幕間の余興)‖

スポットの光の輪に、恰幅の良い山村蛙登場。独唱。

{渋いバリトンが湧き上がる}
♪百万遍唱えても、千万言費やしても、伝わらないコトバ〜
声…あるいは文字となった時点ですでに無意味な言辞、がある〜
飄(つむじ風)に攫(さら)われた塵埃(じんあい)のように、表されると同時に、跡形もない〜

♪心は、動かない〜
姿は、去ってゆく〜

♪いきなりそばに近づかれれば、たいていの生き物は身を翻し逃げ隠れしてしまう〜

♪かたや、辛抱強く経過を見守り続けるという、無言がある〜寄り添う、という無条件の信頼がある〜

……暫しの沈黙……

{歌手は、一呼吸(ひといき)で畳みかけるように}
♪鍛錬され研(と)ぎ澄まされた、錵(にえ≒におい)滾(たぎ)る刃金(=鋼)の沈黙は、刃毀(こぼ)れひとつせず命を護(まも)り〜

♪付け焼き刃の鈍(ナマクラ)の饒舌(じょうぜつ)は、人の血を流すと同時に脆(もろ)くも頽(くずお)れる〜

♪ゲロゲロゲロゲロ
クワックワックワ〜〜〜ッ



|流転|(笑)

s.k
2009/07/04 00:29

‖続々 インテルメッツオ(幕間の余興)‖

< Club“Pipa Pipa”>

Hi! This is DJ馨. I'm welcome the ΧΕΠΟΡЦΣ,Dance Dance `09 in Pipa Pipa!

Great dance music for the international artists the ΧΕΠΟΡЦΣ group world wide the come up of the next star! so check it out!!

s.k
2009/07/04 18:33

Well,do you like house,jungle,techno,Bossa,black contemporary,ambient,acid jazz,and so on?

The song is the great dance music. We got it! and this is GREAT!!

Digby Jones - Pina Colada !!!
http://www.youtube.com/watch?v=Vi-7VTt65EM



ΧΕΠΟΡЦΣ(Xenopus),Dance Dance `09 in Pipa Pipa continued!?

s.k
2009/07/04 18:33

‖続々々 インテルメッツオ(幕間の余興)‖

真っ暗闇の中、期待と不安の入り混じった観客席から、遠慮がちな咳払いがあちらこちらで起き始めた。真っ暗になって、少し時間が経っていた。

…ふと、どこからか聞こえてくる小鳥の囀(さえず)り。その爽やかな歌声に耳を澄ましていると、俄(にわか)に、虹色に煌めく大画面が舞台に出現する。
オーロラのようにたなびく光の布帛(とばり)が、手招きするようにやわらかく明滅していると思いきや…、それは、影絵となって伸びてきた手指が、背景となる砂粒を画面全体に撒いているのだった。
…するとそこへ、画面下から、おもむろに伸び出す鳥に扮したしなやかな腕の影が――それは観る者によって白鳥に。観る者によっては黒鳥に――、流麗なタッチで字を綴ってゆく…。


“Saint JunKtion”


電光石火、砂は払われた。文字も払われた。

…すでに、物語は始まったのだ…。


to be continued…

s.k
2009/07/07 06:07

…‥・ひと雫(しずく)の水滴。

水の球が、大きくなって大きくなって、ゆらゆら揺れて、ポタリと落ちた。



少年がひとり、膝を抱え、放心したように座り込んでいる。
真っ直ぐ前を向いて見開かれた目。
いっぱいに開けられた目が、みるみる涙でいっぱいになり、はらはらと零(こぼ)れ落ちる。

水滴は、少年の頬を伝って流れる涙だった。


暗雲のように垂れ込める物ぐるおしさに、雁字がらめになった、小さな魂。

自分が、いま、ここにこうして居ることが、信じられない。

言葉にならない。
言葉にできない。

とめどなく涙が溢れる。

悲嘆に明け暮れ、胸張り裂けるほど泣きに泣くうち、雫は幾筋もの流れとなって寄り集まり、やがて嵩(かさ)を増してゆき、さらにさらに増してゆき、ついに涙は川となる。

心の堰(せき)が塞(せ)き止められずに切り崩れ、荒れ狂い逆巻くうねりに呑みこまれ…、

少年は、自分の流した涙の川に溺れてしまう。

暴れる川に叩きつけられ、揉みくちゃにされ…、押し流される激流に苦しみもがき、必死に喘いで気が遠くなり…。


to be continued…

  formerly known as ...
2010/07/07 23:56

…気がつくと、いつの間にか、縹緲(ひょうびょう)たる無辺際の河原へと、流れ流れ着いていた。


to be continued…

  formerly known as ...
2010/07/08 12:44

そこは、一切無色の荒寥たる河原。
一本の枯れた大樹が、うら寂しく立っているだけだった。

音が失われ、風が失われ、
時が喪われた、
止まってしまった世界。

夢か現(うつつ)か。
どちらでもよかった。

何か見えない糸に導かれるように、ぎこちない動作で起き上がった。


少年は、着ている服を引き裂き、綱代わりにして樹の枝に掛け、首を縊ることにした。


すべてに疲れ果て、もう体中のどこにも気力はなかった。
早く、とにかく早く楽になりたくて、泥のような足を引きずりながら、樹のもとへ歩み寄った。

思い残すことは何もなかった。
満身創痍の心はもはや、沈黙に運命を委ねていた。

物心つかぬ年頃とは言え、死は、厳粛な不可知であった。
肉体の苦痛という怖さを越えて、永遠の苦悩を終わらせてくれる静寂に縋(すが)ろうとした。

少年は、忌まわしい記憶、悲しい記憶を、かなぐり截ち棄て忘れられる、安らかな眠りに想いを馳せた。
少年は眠りたかった。
目覚めることなく、眠り続けたかった。


ぼんやりと布(ぬのきれ)を見つめるうち、しだいに意識が遠退いていく。

体中から感覚がなくなってゆく。
生命(いのち)の灯し火が小さくなってゆく。


灰色の滲む眼差しを天空へ注いで、この世に別れを告げようと瞼を閉じた。

布に顎を掛けた…。

その刹那、濡れそぼったパーカーのフードに、異変を感じた。


to be continued…

  formerly known as ...
2010/07/09 00:43

と胸を衝かれ、張りつめた息を凝らして、おもむろに手探りしてみる少年。

…現れたのは、両手の平より一回り小柄な、サフラン色をした美しい蛙であった。

蛙は、おとなしくなって手の中に丸く収まり、静かな息づかいで少年の顔を見つめている。

「元気そうだね」
「丸々してるから、ごはんはちゃんと食べてるのかな?」

掠れた声で話しかけながら、自分の手さえ遠くにあるような覚束ない意識で支え、ゆっくりゆっくり近づけた片方の指で、蛙の背中を優しくそっと愛撫する。

逃がしてあげなくちゃ、と、
剥き出しの荒れ地のどこかに湿った茂みはないか、周りを見回して探そうとすると、蛙は、さっきのようにまた身動(みじろ)ぎはじめた。

少年が、あっと言う間もなく、掌をすり抜けて跳び出した。
大樹の幹にしがみついた。


to be continued…

  formerly known as ...
2010/07/09 19:07

途端に、蛙の体が、燦然と強い虹を放った。

まぶしさに目が眩(くら)み、手翳しして後退(ずさ)る少年。

次第に収束する発光を、翳した指の合間から覗き見ると…、


to be continued…

  formerly known as ...
2010/07/10 13:10

蛙の姿はそこになく、替わりに扉の取っ手が幹から突き出していた。

おそるおそる、しかし、そうせずにはいられない何かによって、少年は取っ手に手をかけた。

扉は開いた。

吸い込まれるように樹の内へ入ってゆく…。


to be continued…

  formerly known as ...
2010/07/10 19:05

…はじめは、何も見えなかった。

暗闇に馴染むうち…、それは、つい今しがた、扉の外での光景そのものだということに気づく。

つい今しがた、自ら命を断とうとしていた少年の目の前に、
今まさに、自ら命を断とうとしている、もうひとりの少年自身がいる。

これはいったいどういうことなのか。


to be continued…

  formerly known as ...
2010/07/12 21:52

押し黙る樹木と共に、やや遠目に仄かに浮かびあがる、もうひとりの少年は、無念さの滲む横顔を僅かに覗かせ、垂れ下がっている布(ぬのきれ)を両手で掴み天を仰ぎ見ていた。

背格好といい、服装といい、少年本人に瓜ふたつであった。

向かい合う自身の痛ましさ、打ちひしがれた有り様(ありよう)の衝撃におののき、心が散り散りになりかけながらも怯(ひる)まず、どこにそんな力が残っていたのか、声の限りを振り絞り、少年は自分に叫んだ。

「待って!死なないで!」

なんとしても思い留まらせたくて、話しをしようと自分自身のもとへ無我夢中で駆け寄ろうとする少年。

ぬかるみに取られたように、足がなかなか前へ進まない。

近寄りながら、自分の味わってきた辛苦の数々が、再びまざまざと黄泉がえる。
少年の目から大粒の涙が零れる。


to be continued…

  formerly known as ...
2010/07/13 19:07

呪縛の涙、堂々巡りの彷徨う涙、惻隠の涙、破滅へと導く涙。
崖っぷちの泪、誓約の泪、血と汗の泪、屍から羽化する泪。

どのような意味を含んだ涙か。

かえりみる少年のなみだは、滔々(とうとう)と零れ落ちながら…、

次から次へ真っ白い小鳥となって、姿を変えて羽ばたいてゆく…。

小鳥たちは、立ち枯れた一本の樹をめがけ、まっしぐらに飛んでゆく。

光となって。目にも留まらぬ速さで。


to be continued…

  formerly known as ...
2010/07/15 00:07

乾ききり、皹(ひび)割れてしまっている一本の樹へ。

純白の小鳥たちは、恵みの雨が降り注がれているかのように枝々に留まり、今まで聴いたこともない合唱で啼いているのだった。

数羽の際立つコロラトゥーラを花芯にして、目眩(めくるめ)くグラデーションの花弁が渦巻くように幾重にも廻(めぐ)る、馥郁たる花冠のコーラス。

少年は、無上の歓喜のうちに涙が止まり、小鳥たちの歌に聴き惚れる。


――もう一人の自分の姿は、いつの間にかいなくなっていた――。



to be continued…

  formerly known as ...
2010/07/15 19:11

小鳥たちは、爽やかな歌声を刻々と変えてゆく。
そして驚いたことに、その旋律に合わせて、群れ集う小鳥たちの不思議な雲塊は、様々に姿かたちを変えてゆく。


少年が、これまで別れてきた、
愛すべき人々の面影、笑顔。
大切にしていた宝物。
愉しかった想い出。しみじみとした想い出。


そのひとつひとつを懐かしみながら、切ない残像を灼きつけながら、まばたきもせず一心に見つめている。

愛すべき人々、愛着のあった品々、想い出…。

少年は、それらの名前を、ひとつひとつ心を籠めて呼び掛けていった。

呼んでいくうち、それに呼応して、鳥たちの旋律もいっそう力強く響き渡り、玲瓏たるハーモニーが絶頂を極める。


to be continued…

  formerly known as ...
2010/07/16 19:06

本然の純白が、憧れ思い描いていた、誰にも打ち明けたことのない夢のシルエット。



…ハッと、少年は我にかえる。



樹の下に立っていた。

その時、灰色一色だった風景は、実に生き生きとした鮮やかな色彩を取り戻していた。

見上げれば、純白の花々が燃え盛っている。

その間(あわい)から望む空の青の、なんと澄み切っていることか。
そして、目の前にどこまでも広がる、みずみずしい草原(くさはら)。

  formerly known as ...
2010/07/16 23:59

少年は、樹を抱擁(だ)きしめる。

ふと見れば、さっきのドアノブはなくなっていた。

「死んじゃおうとした僕」
遠い目をしてポツリと云った。


名残りを惜しみながらも、樹のもとを離れる決心を固める。

涙の川へは戻らない。

少年は、大地をしっかり踏み締めて歩き始める。


to be continued…

  formerly known as ...
2010/07/17 00:00

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心地好い薫風が野面(のづら)をそよぎ渡る。

純白の花びらが一枚、風に乗って飛んでゆく。軽やかに。

…と、たちまち、一羽の小鳥に姿を変じ、囀りながら羽ばたいて、天高く消えていった。


降り注がれる、太陽の陽射しがいっぱい。
いっぱいになって、一瞬だけ虹が架かって、画面すべてが真っ白になった。



|不退転|

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2010/07/17 19:04

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「くず人」とカエルの王様 magnoria/BIGLOBEウェブリブログ
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