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zoom RSS 「近江山河抄」

<<   作成日時 : 2007/11/24 13:53   >>

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  京都大原の旅から帰って、心の憤りが収まらないまま、白洲正子の「近江山河抄」を読み返していた。十一面観音について書かれた文章を読んで、少し心が優しくなれそうな気がした。

 役行者と同じく、泰澄大師も伝説上の人物とされているが、越前には今でも多くの事蹟が残っており、民衆の間び強い信仰が生きているのをみると、その存在を一概に否定することは出来ない。伝記によると、彼は越智山の麓で生れ、少年の頃から山に籠って、修行をつづけていた。壮年に達っした時、「天衣瓔珞を以て身を飾れる美女」から、早く来るべしというお告げを受け、白山登山を思い立つ。その中で三年間籠っているうち、ついに生身の十一面観音を感得し、霊験あらたかな行者といて、四方にその名がとどろいたという。
 この伝記からも知れるように、泰澄はシャーマン的な人物で、もっぱら呪術によって人を救済したらしい。彼は近江の三上氏の出と伝えられ、伝統的にいってもそういう霊力を備えていた。十一面観音とは、要するに、白山の神が化身したものに他ならず、そういう手つづきを経なければ、外来の仏教を骨肉化することは出来なかった。はからずもおれは印度の原型と一致し、山に生れた神は、山に帰ることによって、復活することを得たのである。
 山岳信仰について、私は殆ど無知にひとしいが、山に籠るということは、生みの苦しみを味わうことではなかったであろうか。或るいは、生れる苦しみといってもいい。もともと色々なものを生む山には、母神の性格があり、その中に入って、長い間籠るというのは、母の体内ですごした混沌の時代を、再び体験することで新しい生命を得る、そういうことを意味したと思う。
 人界と隔絶された神山で、木の実を食べ、草を枕に何年もすごす中、身心ともに透明無色と化すことは、我々凡人にも充分想像のつくことである。泰澄の前に、十一面観音が出現したのは、正しくそういう時であった。それは母なる神の分身であり、長い禁欲生活のはてに、男が夢に見た永遠の美女の姿であった。仏像の儀軌などというものは、素人には退屈極まりないものだが、十一面観音の身長は、どの経典のも一尺三寸とされている。服部如実の説によると、この小ささは、「胎内の等身を示す」そうで、成長して八尺五寸になるというのは面白い。ふつういう「等身大」とは、人間の背丈ではなく、成人した仏の高さを示すのであろう。行者が山に籠るのは、自ら胎内仏の時期を経ることに異ならず、開眼した時、仏の身長を得る―いい方はまずいけれども、即身成仏とは、そういう体験をいうのだと思う。形だけを示して、後は各々の経験と工夫にゆだねる。でなければ、儀軌の無味乾燥さは意味をなさない。また素材としては、白栴檀を用い、代用品には、柏もしくは桂の木を使用するか、何れも白く、香りの高い木であるのは、白山のイメージとも合致する。十一面観音の本地が、イザナミ命とされたのも、単なる思いつきではなく、母なる神の再来であったからだ。
 役行者は、吉野の金峰山で、蔵王権現を感得したという。山岳修行者にはふさわしい仏だが、大衆の中へ入って行くには厳しすぎる。一方民衆の間には、太古からの山の神の信仰が根づよく残っていた。仏教を拡めるには、彼らと手を結ぶ必要があり、その要求に応えたのが泰澄であった。十一面観音は、日本の聖母マリアである。不動明王や蔵王権現とは、表裏一体をなしているが、荒神の残影はみな宝冠の飾りに化けてしまった。もろもろの善業悪業の重荷に堪え、童子の笑みを浮かべた観音は、そうして私たちの方へ近づこうとする。そのやわらかい足の親指のふくらみは、一歩踏み出すということが、人間にとっていかに至難なわざか、無言のうちに語っているように思われる。

http://www.buaiso.com/masako-text.html ←白洲正子(武相荘HP)
白洲正子は幼い頃の自分を自閉症に近かったと言っています。男の中に切り込んでも入っていこうとして何度も泣かされたこと、その真剣勝負の生き方には共感と尊敬の念を感じます。
http://zavomya.seesaa.net/article/5724896.html ←こばやし鷺游さんブログ(書道家)

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